映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!35点

「映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!」は、「映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」、「映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!」に続く、シリーズ第3弾である。アニメと実写を組み合わせた点は評価できるが、話はやや薄味だ。ちなみに、本作を観る上で前2作の知識は必要ない。

天野ケータ(=戸松遥)とウィスパー(=関智一)は、自宅2階の部屋でテレビを観ている。それによると、シロナガス湾上空で謎の飛行物体が確認されたらしい。2人はそのニュースについて話すうち、ちょっとした喧嘩を始めてしまう。

コマさんとコマじろうの兄弟はショッピングセンターの前を歩いている。兄のコマさんはアイスクリームを手に持ち、おいしそうに食べる。弟のコマじろうは、兄ちゃんほんとにアイスクリーム好きズラね、と感心する。

アイドルグループ、ニャーKBのコンサート会場は熱気に包まれている。ジバニャン(=小桜エツコ)、ブシニャン、ロボニャンの3人は観客席にいて、舞台上のニャーKBに熱い声援を送る。

そのころ、さくらニュータウンの空に巨大な空飛ぶクジラが現れる。クジラは大きな口を開けて、町一杯に叫び声を轟かせる。

その声はケータたちの部屋にまで届いた。あまりのうるささにケータは耳をふさぎ、ウィスパーは部屋中を飛び回る。そうして気が付くと2人は実写の世界にいて、ケータは本物の男の子に、ウィスパーはCGに変わっていた。

ネタバレなしの感想

私が観にいったのは2日目の昼だったが、大スクリーンは子供連れの家族で満杯だった。私も元気な子供たちの隣に座らせてもらった。

本作の上映の前に「スナックワールド 人嫌いのレニー」という9分ほどの短編映画が流れる(「レニー」は本作の開始予定時刻に始まる)。これはチャップという男の子と森に住むドラゴン、レニーとの友情を描いた作品だ。前作「スナックワールド」も映画妖怪ウォッチ第2弾と同時上映された。

本作は予告通り、アニメと実写の世界を行ったり来たりする映画である。この挑戦自体は、意欲的でよかったと思う。

しかしながら、本作はその設定をネタにして時間を使いすぎた。世界が入れ替わり、ケータとウィスパーが驚く、という描写の繰り返しがかなりしつこい。また2人は知人に一人一人会い、そのたびに、実写の世界ってなんか変、という会話を反復する。これでは観客もうんざりするだろう。

一方、本作は妖怪ウォッチシリーズということで、後半の戦闘シーンはお約束だ。きっと最後にはジバニャンの北斗百裂拳(…風の、百裂肉球という技)が炸裂するに違いない。

こうした事情から本作がドラマに割ける時間はあまり残されず、物語は必然的に間に合わせのものとなった。

バレエダンサーを目指す南海カナミ(=浜辺美波)の登場場面はいかにも取って付けたようだ。なぜケータはカナミが今回の騒動に関わっていると見抜けたのだろうか。一応、クジラ文房具店の向かいにさくら病院があって、その屋上にカナミが立っている。しかしそれだけでは説明が不十分だし、その際の展開はあまりに急速だ。これで子供たちが付いていけるだろうか。

また中盤でカナミがやっていることは、本来のカナミの願望からは少しずれている。カナミはバレエに復帰することはできそうだが、そうしても人にはかなわないだろう、と思って悲しんでいる。カナミの希望は単に踊ることではなく、踊った上で世間から評価されることだ。

結論もやや安易に感じられた。練習すればきっと勝てるようになる、という話でまとめてよかっただろうか。私たちの人生は運に大きく左右され、努力で解決できることはほんのわずかだ。でもそんな中で折り合いを付けて生きていかなくてはならない。だから、裏技を使わず、再び踊れるということに意義を見いだしてもよかったと思う。

話の筋以外の点についても簡単に述べておく。

空飛ぶクジラがクジラマンに変身したところは違和感を感じた。制作者は、最後の敵としてはノーマルのクジラじゃ力不足だ、もっと悪そうな奴に変えよう、と考えたのかもしれないが、これではあまりに人為的だ。ウィスパーが言っていた、時間的にこいつがラスボスなんですから、という冗談は笑えない。制作者が無理矢理そうしたのだ。妖怪ウォッチにいきなり仮面ライダーの悪役風の敵が出てきたから、子供たちも不思議に思っただろう。

本作ではところどころで気の利いた冗談が楽しめる。しかし話そのものの水準が低かったため、それらが輝くことはなかった。

さすがの妖怪ウォッチシリーズと言うべきか、「ゲラゲラポーのうた」や「妖怪体操第一」が流れたときの会場の一体感はすごい。私の隣に座っていた子供たちも、身を乗り出してノリノリで聞いていた。ただ、これが映画のハイライトでは少し寂しい気もする。ちなみに「妖怪体操第一」の「○○けん」というのは、九州や中国地方あたりの方言のようだ。

本作は発想は面白かったものの、子供たちを十分満足させるには至らなかった。上映後、子供たちは妖怪ウォッチグッズをねだるかもしれないが、それも不当な要求ではないだろう。

監督 ウシロシンジ  声、出演 戸松遥、関智一、小桜エツコ、遠藤綾、重本ことり、梶裕貴、潘めぐみ、南出凌嘉、山﨑賢人、斎藤工、浜辺美波、黒島結菜、澤部佑、遠藤憲一、武井咲、ほか

1時間40分

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