グッドモーニングショー 25点

「グッドモーニングショー」は、軽い気持ちで作ったテレビドラマのような作品である。

早朝3時、目覚まし時計の音で澄田(=中井貴一)は目を覚ます。居間に行くと、妻の明美(=吉田羊)と息子が無言で別々のソファに座っている。澄田は、飲みかけの500mlペットボトルを冷蔵庫から取り出し、中の水を飲む。どうしたのか、と聞くと、明美は、息子から話がある、と言って、息子に促す。すると息子は、自分は結婚する、と言う。状況が飲み込めない澄田に対し、明美は、息子が付き合っている彼女に子供が出来た、と説明する。澄田はとても驚き、まだ学生なのにどうするんだ、金は出さないぞ、子供っていうのは立派な仕事に就いてから持つものだ、などと言う。それを聞いた息子は、朝からケーキを食べてはしゃぐのが立派な仕事か、と怒り、部屋を出て行く。まだ暗い中、澄田はマンションの前に止まったタクシーに乗り込む。タクシーがしばらく走ると、圭子(=長澤まさみ)からの電話が鳴る。澄田は電話に出て陽気に挨拶するが、圭子は、先日の澄田との交流について話し出す。そのころ、圭子を乗せたタクシーがするすると現れ、澄田のタクシーに併走するが、澄田は気付かない。それを聞いた澄田はあわてて、同じ部屋に入ったけど、何もなかったじゃないか、と釈明する。圭子は、今日の生放送で自分たちのことについて発表しようと思う、楽しみにしていてほしい、と言って電話を切り、圭子のタクシーは少し加速して前へ出る。

ネタバレなしの感想

本作はフジテレビによる制作だが、なぜか舞台となる局はテレビ朝日(?)の設定になっている。このことは少し不思議だが、澄田が不倫疑惑などで追い込まれたり、あるいは、フジテレビの朝の番組があまりにも軽すぎて使えなかったことが原因かもしれない。本作は、さすがにテレビ局によるものとあって、部外者が知り得ないような細かい情報が満載で面白い。私は内部事情が全くわからないのだが、本作ではカンペ(?)やホワイトボードが大活躍し、番組進行がとてもアナログ式のように感じられた。読みにくい字でも詰まらないのがアナウンサーの力なのだろうか。しかし、本作で最も重要なのは、澄田が立てこもり犯の西谷(=濱田岳)と交渉する場面だ。ここで中井貴一と濱田岳は上手く演じており、これによって映画全体を支えることができた。

ただ、本作の完成度は決して高くない。テレビ局の職員たちの行動は打ち合わせからして大げさで、まるで俳優たちが舞台上で演技しているかのように写る。それに、占い師から占いが届い、などといちいち叫ばないだろう。また、局全体がすこぶる狭いし、報道部の扱いも極端だ。撮影にフジテレビの建物は使えなかったのだろうか。さらに決定的なのは、圭子の行動があまりに現実離れしていることだ。それを周りが放置するのを見ていると、私たち、真面目な映画作ってるんじゃありませんよ、と言われているかのようだ。加えて、中井貴一と長澤まさみの朗読は新人アナウンサーのようにたどたどしいから、番組がとても本物とは思えない。現場で澄田があまりにゆっくりと動いたり、長時間固まるのも不自然だ。もちろん映画によっては、このように喜劇風にすることも考えられるだろう。しかし本作では、これらの描写が、肝所である立てこもりの場面を殺してしまった。「ふざけ」主体の中に少しだけ「真面目」が入っていると、その「真面目」は嘘っぽくなる。また、西谷の回想があっさりしすぎていることも、本作に深みがない原因だろう。

本作はテレビ局の内部を細かく描いたという点で少し珍しい。しかしその内容からすれば、一般の人が映画館で観るほどの作品ではないと思う。

監督 君塚良一  出演 中井貴一、長澤まさみ、志田未来、濱田岳、ほか

1時間44分

スポンサーリンク
面白い映画のレクタングル(大)
面白い映画のレクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
面白い映画のレクタングル(大)