アサシン クリード 20点

「アサシン クリード」はドラマがほとんどなく、内容の大半を騒々しいアクションが占める。

何世紀もの間、テンプル騎士団は神話に登場する「エデンの果実」を探し求めた。エデンの果実を見つけて秘密を解読すれば、全ての意思の自由を操れる、と信じていたのだ。そんなテンプル騎士団に立ち向かったのは「アサシン」と呼ばれる同胞団だけであった。

1492年、スペイン、アンダルシア。レコンキスタによりイベリア半島はテンプル騎士団の手に落ちた。しかしスルタン・ムハンマドとその家臣たちは未だグラナダで抵抗を続けていた。だがもし王子が捉えられたなら、ムハンマドはグラナダとエデンの果実を明け渡すだろう。

アギラール(=マイケル・ファスベンダー)は、自由意思を守り抜くことを誓うか、と恩師ベネディクト(=カルロス・バルデム)に問われ、誓う、と答える。ベネディクトは、なんとしてもエデンの果実をテンプル騎士団に渡してはならない、と念を押す。

1986年、メキシコ、バハ・カリフォルニア州。幼いカラム・リンチ(=カル=アンガス・ブラウン)は粗末な自宅へと帰ってくる。両親に呼びかけるが返事はなく、居間へ進むと母親のメアリー(=エッシー・デイヴィス)が椅子に座った状態で血を流して死んでいた。さらに部屋を見渡すとブレードで武装した父親、ジョセフ(=ブライアン・グリーソン)の姿があった。ジョセフは、お前の血はお前自身のものではない、彼らが私たちを見つけた、逃げろ、とカルに語りかける。そこへ車が続々とやってきて、カルは家の裏口から逃げ出す。

30年後、テキサス州ハンツビル刑務所。カル(=マイケル・ファスベンダー)は殺人を犯し、今、死刑が執行されようとしていた。椅子にベルトで固定され、腕の血管に管がつながれる。ガラス越しに見守る黒髪の女性(=マリオン・コティヤール)と目が合うも、すぐに薬物投与が始まる。

カルが目を覚ますと、そこは近代的な施設の中だった。先ほどの女性が傍らにいて、ソフィア・リッキン博士、と名乗る。

ネタバレなしの感想

本作の大部分はアクションなのだが、それは常にドタバタとして落ち着きがなく、見ている方は目が回ってしまう。私は本作を観て、朝の通勤ラッシュを思い出した。また映画におけるアクションはまともなストーリーがあってのものだ。格闘技を見るために映画館へ行くという観客は、決して多くないだろう。

本作は冒頭の説明からしてわかりづらい。「エデンの果実を見つけて秘密を解読すれば、全ての意思の自由を操れる、と信じていた」とあることから、おそらくエデンの果実はまだ使われていないようだ。しかし字幕はすぐに消えてしまうから、鑑賞の際に私はきちんと説明を追いかけられなかった。そのため「秘密を解読すれば」の部分を読み落とし、エデンの果実を持っている者は無敵である、と誤解していた。

ゲーム版においてはエデンの果実は複数あり、どれも万能ではなく、また使った本人が危害を被ることもあるらしい。つまりゲーム版制作者はエデンの果実をブラックボックスとして導入し、後から話の都合に合わせて新しい設定を付け加えていったのだ。要するに、なんでもあり、である。

もしかすると本作に登場するエデンの果実もゲーム版のそれのように恣意的に扱われているのかもしれない。だが本作の場合、エデンの果実に関する情報は冒頭の記述が全てなので、その詳しい性質や来歴は不明なままだ。

カルが連れてこられたのはアブスターゴ社というマドリードの民間企業であった。ソフィア・リッキンはアニムスという装置をカルに装着して過去へ「退行」させる。

本作の主要部分は退行先における話のはずだが、1度目の退行が始まる頃にはすでにかなりの時間を使っていた。これで間に合うんだろうか、と心配になったが、案の定、過去で見られるのはアクションばかりで会話はごく限られている。おまけに退行は時間的に飛び飛びで行われるから、話のつながりを感じにくい。

本作はそれ以外にも不満な点が多かった。

1度目の退行はかなり危機的な状況で終わる。恋愛もので接吻シーン以降が省略されることは多々あるが、この場面に関してずるは許されない。なぜなら、普通に考えればアギラールは死ぬはずだからだ。

2度目の退行はアギラールにとってあまりに都合良く進む。本作の主演はマイケル・ファスベンダーだが、こういった描写を見ていると「アサシン クリード」だか「X-MEN」だかわからなくなる。

3度目の退行も現実味に欠けた。

アギラールはラミレス将軍(=ジュリオ・ジョルダン)をやっつけるとポーズを決めるのだが、本来ならさっさと審問長官のトマス・デ・トルケマダ(=ハビエル・グティエレス)を追いかけなくてはいけないところだ。

またアギラールによるエデンの果実の扱いは雑すぎる。もしアギラールが現代の日本に住んでいたなら、簡単にオレオレ詐欺に引っ掛かっただろう。

またどうしてコロンブス(=ガブリエル・アンドリュー)のセリフは都合の良いときだけラテン語(?)になるのか。

本作の結末はあらゆる映画の中で最悪の部類に入る。次回作につなげる目的の中途半端な終わり方は最近のハリウッド映画でしばしば見られるが、こうしたエンディングは後味が悪い。

私が観たのは初日の午前だったが、中スクリーンに観客はそこそこ入っていた。ちなみに、エンドクレジッツの後には何も用意されていない。いずれにしても、観客にとっては迷惑な話である。

本作は話の筋が弱く、度重なる戦闘もどこか軽薄だ。映画館で観ることは決して薦めない。

原作 ゲームシリーズ「アサシン クリード」  監督 ジャスティン・カーゼル  出演 マリオン・コティヤール、ジェレミー・アイアンズ、ブレンダン・グリーソン、マイケル・K・ウィリアムズ、アリアーヌ・ラベド、シャーロット・ランプリング、ほか
1時間56分

スポンサーリンク
面白い映画のレクタングル(大)
面白い映画のレクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
面白い映画のレクタングル(大)