「スーサイド・スクワッド」は、DCコミックス社発のスーパーヒーローたちが実写の同一世界、DCエクステンデッド・ユニバースで活躍する様子を描く一連の作品群に属する。そのうち、第1作は「マン・オブ・スティール」、第2作は「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」であり、本作はそれらに続く第3作である。それは理解するのが難しいのみならず、前2作品同様、期待はずれな内容に終わった。
簡単な予習 (前2作品のネタバレが含まれます)
- アメリカの漫画出版業界はDCコミックスとマーベルコミックスの2社が大手。
- それぞれが生んだ主なスーパーヒーローは、DCがスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンなど、マーベルがスパイダーマン、キャプテンアメリカ、アイアンマン、など。
- DCのスーパーヒーローの寄せ集めはジャスティスリーグオブアメリカ、マーベルのそれはアベンジャーズと呼ばれる。
- 「マン・オブ・スティール」はスーパーマンを描いた作品。その最後の場面で、スーパーマンは同じクリプトン星出身のゾッド将軍と死闘を繰り広げるが、その際、バットマンが経営する会社の自社ビルを含む、広大な範囲で被害が出る。
- 「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」では、上記の戦いで甚大な被害をもたらしたスーパーマンに対して、世間からの風当たりが強まる。さらに、自社ビルと従業員が犠牲になったバットマンは、スーパーマンに恨みを募らせ戦いを挑む。しかし、母親の名前が同じ、という理由で2人はなぜか仲直り。そのころ悪の大富豪ルーサーがゾッド将軍の死体と自身のDNAを使い怪物を作り出す。そこでバットマンとスーパーマンは新登場のワンダーウーマンと共に怪物を倒すが、その戦闘でスーパーマンは死んでしまう。
政府組織アーガスの指揮官ウォーラー(=ヴィオラ・デイヴィス)は、政府が一連の事件に対処できなかったことに対し憂慮の念を抱いていた。そこでウォーラーは政府の手で制御可能な大きな力が必要であると考え、ベル・レーヴ収容所の特殊な囚人たちを利用して特攻部隊、タクスフォースXを組織することを提案する。中でも一番の有力候補と考えていたのが、考古学者のムーン博士(=カーラ・デルヴィーニュ)であった。ムーンは南米のジャングルで遺跡を発見するが、そこにあった小さな偶像の首を折ってしまったことで古代の神エンチャントレスを解放し、それに憑依されてしまったのだ。国防会議中、誰もがウォーラーの案に懸念を示すが、ウォーラーは会議室後方で待機していたムーンを前に呼びだす。ムーンがつぶやくと、自らの中にいたエンチャントレスが表に現れ、ムーンを支配する。ウォーラーの命に応じ、エンチャントレスは一瞬消えて再び現れ、分厚いファイルを卓上に放り投げる。それはイランの機密資料であった。ウォーラーはエンチャントレスに元のムーンに変わるよう命ずるが、動きがないとみるや、手元にある何かの塊をピックで突き刺す。するとエンチャントレスは胸を押さえて苦しみはじめ、ムーンにもどる。こうして参加者たちは納得させられ、ウォーラーは計画の実施に踏み切る。
ネタバレなしの感想
本作の予告編では、不良少女のようなハーレイ(=マーゴット・ロビー)が大きく取り上げられている。しかし実際のところ、本作はハーレイが主役の映画ではなく、ハーレイはあくまでタクスフォースXの一員という位置づけである。それでも、本シリーズでは超人的な人物(主に男性)の活躍ばかりが目立つから、比較的普通の少女のようにハーレイを描いたことは、新鮮でよかったと思う。
ただ、それ以外に本作のよい点はなかなか見つからない。タクスフォースXの人員たちは首に小型爆弾を植え付けられて強制的に戦闘に従事させられるから、彼らと政府の間には相当な緊張感があるはずだ。しかしそういった設定にしては、なんとも登場人物たちの雰囲気が緩い。加えて、タクスフォースXの人員たちは、およそ人がよさそうに見えるのだ。中盤以降、この状況はさらに悪化する上、雑で退屈な戦いが続く。そのため、もともと大げさだったCGの映像もますます嘘っぽく感じられてしまう。
本作に深い物語はなく、現実性もなく、そして娯楽としての面白みもない。DCの熱狂的な支持者であれば見逃せない1本であろうが、個別の作品として考えた場合、本作を観る価値は決して高くない。
監督 デヴィッド・エアー 出演 ウィル・スミス、ジャレッド・レトー、マーゴット・ロビー、カーラ・デルヴィーニュ、ほか
2時間10分