何物 25点

「何物」は演劇性に乏しく、映画館で観るには物足りない作品だ。

大学生の拓人(=佐藤健)のツイッターが映し出される。

就活の面接で求められる1分間での自分表現は、140字制限のあるツイッターの投稿のようだ  

光太郎(=菅田将暉)のバンドが引退ライブを行っている。光太郎は茶髪の長髪を振り乱し、オレ、変わるから、と舞台の中央で歌う。

その様子を、スーツ姿の拓人は2階から眺めている。やがて、携帯電話をいじり出す。そこに瑞月(=有村架純)が現れ、拓人に声をかける。拓人は慌てて電話を隠し、瑞月さん、もう帰国してたんだ、と尋ねる。瑞月は、こないだ帰ってきた、と言って、ライブに視線を向ける。拓人は瑞月のスーツを眺め、スーツ買ったんだ、と聞く。就活がはじまるから、と瑞月は答える。ライブを聴きながら、光太郎君、歌上手くなった、としみじみつぶやく。拓人が合図値を打つと、瑞月は拓人の方を向いて、拓人君の舞台もよかった、と言う。

後日、拓人がアパートの一室に帰ってくると、濡れた黒髪をタオルで拭きながら、光太郎が洗面所から出てくる。拓人は、家で髪の毛染めるなんて高校生みたいだ、と言う。光太郎は、だって金がもったいねえから、と答え、就活はお前の方がよく知ってるから、いろいろ教えてくれ、と頼む。拓人は快くこれを引き受ける。

ネタバレなしの感想

本作はブログやSNSを駆使する就活生たちの姿を描く今風の作品だ。特に、ツイッターを軸に据える発想は新鮮で、高く評価出来る。

登場する就活生たちは携帯電話中毒のようだが、これが大学生たちの実際のところなのだろうか。拓人が誰に読まれるともわからないツイッターをまめに更新する姿は少し特異な感じがするが、よく考えてみれば、私も他人のツイートを読むことがある。

みんなで一緒に就活対策、というのも違和感があってなかなか理解しがたいものの、私が大学生のときにも友人に代わってウェブ試験を受ける人がいたことを思い出した。

だから本作は案外、昨今の就活生たちの様子を上手く映し出しているのかもしれない。

また、就活に縁のない役者たちが必死に就活生を演じる姿は、見ていて微笑ましかった。

しかし、本作には納得できないところも多い。

前半、理香(=二階堂ふみ)は自分の住むアパートの一室を就活対策本部にすることを提案し、その後も嫌な様子は見せない。ときに料理を出し、プリンタやパソコンをタダで貸してやる。だが、これは現実的でない。学生はお金がないから出費には敏感だし、パソコンには見られたくないものも入っていよう。それに、就活に集中したいなら、いつでも安心して使える空間が必要ではないか。ましてや、理香は恋人の隆良(=岡田将生)と同棲しはじめたばかりである。そして彼らが対策本部でやっていることといえば、もっぱら飲酒と雑談だ。理香は足を引っ張られてばかりのように見える。

本作では、長いものには巻かれておけ、という主流派と、我が道を行く、という反主流派が争う。

主流派の気持ちは、みんなかっこ悪くても必死に頑張ってる、という瑞月の言葉に集約されている。本作は、学生たちに1分間での自己表現を求める企業を皮肉っているが、では果たして、面接を受ける側の瑞月たちはどうだろうか。彼らはもう大学生なのだから、就活を有利に進めるためには日頃の学業成績が大事なことはわかっていただろう。にもかかわらず、就活がはじまるまではほとんど勉強せずに遊び歩き、いざはじまってから小手先の技術で乗り切ろうとするようでは、力強い言葉にも説得力がない。海外に行って外国人と話すのは遊びである。

一方、反主流派の気持ちは、ラインで拓人に非難されながらも淡々と初心を貫くギンジの姿勢に表れている。しかしサワ(=山田孝之)の、ギンジは拓人に似ている、という言葉は的外れだ。そして、どこか違う、のではなくて、ほとんど違う。むしろ、ぶれやすく芯が弱いという点で拓人は隆良に似ており、それは本作の終わりにも表れている。

そのほか、拓人の疾走からはじまる一連の流れは、いかにも取って付けたようで気になった。それは多分に人工的で、会話を演出するためのものとしか思えない。

また、本作のオチには驚きがないから、その取り扱いは大げさすぎた。

本作はツイッターの積極的な活用が評価されるべき作品だが、話自体は気の抜けた炭酸飲料のようだ。ツイッターの熱烈な支持者でなければ、本作を観る理由はないだろう。

原作 朝井リョウ『何物』  監督 三浦大輔  出演 佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之、ほか

1時間37分

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