マイ・ベスト・フレンド 25点

「マイ・ベスト・フレンド」は最初から最後まで見所がなく、恐ろしく退屈な作品である。

出産間近のジェス(=ドリュー・バリモア)は分娩室で痛みに耐えている。傍らにいる医師に対して、冗談交じりの文句を言う。

ジェスにはミリーという幼なじみの親友がいる。ジェスは小学生のときアメリカからイギリスへ移り住んだ。登校初日、教室の前に立ってアメリカ人風に自己紹介すると、同級生のミリーはそれをからかう。でもミリーはジェスが気に入って、イギリスに不慣れなジェスの面倒を見るようになる。学校で一緒に過ごし、家に帰ってはイギリス・アクセントを教え込む。

ミリーの母親、ミランダ(=ジャクリーン・ビセット)は女優だ。少し成長したジェスとミリーは、ある日ミランダの撮影を見学にいく。ベンチに座った2人がミランダを送り出すと、子役の少年がやってくる。2人は少年と人生で初めての接吻を交わし、顔を見合わせて大喜びする。

青年になったジェス(=ドリュー・バリモア)とミリー(=トニ・コレット)は、ロックバンドの演奏会で壇上にいる。観客に、脱げ、脱げ、とせかされる中、ミリーは舞台袖へ避難する。そこへバンドマンのキット(=ドミニク・クーパー)が壇上から追ってきて、ミリーは人生で初めての性交渉をもつ。ジェスはその最中にやってきて驚くが、それが終わると、ミリーと共に喜びを分かち合う。

その後、ミリーはキットと結婚して3児の母となり、ジェスは環境保護活動に熱心に取り組むようになる。

ネタバレなしの感想

まず、本作は配役に問題がある。

主要な俳優たちの年齢は、コレットが44歳、バリモアが41歳、クーパーが38歳、コンシダインが42歳なのだが(2016年11月18日現在)、コレットはほかの3人よりも一回りは年上に見える。これはコレットの年齢が上であることに加えて、痩せていることも原因かもしれない。いずれにしても、ミリー役にコレットを当てたことで、ミリーはほかの3人からは浮いてしまった。特にキットは若々しく、ミリーの夫というよりも、むしろ息子のようだ。当初の描き方からすれば、キットはミリーと同年代か、あるいは若干年上と思われるのだが。

また、ミリーの長女はせいぜい7歳程度に見える。すると、ミリーは44歳だろうから、長女はミリーが37歳のときの子供となる。しかし、これも冒頭の描写と整合性がとれない。ミリーとキットは若気の至りで結婚したはずであり、長女が生まれたのは、おそらく彼らが20歳そこそこのときだ。これが正しければミリーは現在27歳程度ということになるが、44歳とはかけ離れている。

こういった基礎的な設定に違和感があると、観客は映画に集中できなくなる。もしコレットを使いたいのであれば、結婚に至る経緯を変更した上で、もっと年齢の高い俳優たちを周りに配置しなければいけなかった。

一方、本作は脚本の面からしてもきわめて粗末である。

ジェスはなかなか子宝には恵まれず、夫のジェイゴ(=パディ・コンシダイン)と共に不妊治療をはじめる。しかしそんな中、ミリーの乳房に悪性の腫瘍が見つかる。ジェスはめでたく妊娠するが、ミリーにはなかなか報告できない。

たしかに題材は面白く、一見すると深みのある話に思える。しかし実際のところ、本作の仕上がりは目も当てられないものだ。

まず、ミリーの描き方が非常に稚拙である。

癌を宣告されたミリーが絶望的な気持ちになるところまでは理解できる。しかしその後の展開はひどすぎる。当初ミリーは子供たちに心配をかけまいと努力するが、いくつかの出来事を経て、次第にわがまま放題になっていく。

その原因はいずれも、些細な、あるいは致し方のないもので、周りの人々も決して悪気があってやっているわけではない。また、ミリーもそれをわかっていると思う。

他方で、わがままの内容もひどい。癌の完治が難しいならば、おそらく、ミリーは夫と3人の子供たちを残していくことになる。私は、限られた時間をどのように使うのだろう、と思いを巡らせた。しかしミリーは、子供のように自分のことばかり考える。家族やジェスを大きく裏切り、そのことが明るみになっても、反省する様子はさほどない。これがコレットの言う、「本当に嘘のないすばらしい脚本」なのだろうか。

しかも本作は、前半から後半に至るまで、あらかたミリーのわがままで構成されている。これを延々と見せられる観客の身にもなってほしい。私は映画館の席に座っているのが本当につらかった。

後半でミリーがジェスを久しぶりに尋ねる場面がある。でも、再会したときのミリーの態度には首をかしげてしまう。またカフェでミリーがジェスの話を聞いたときの反応は、非常にあっさりしたものだ。ミリーは自分の問題については大騒ぎするのだが、もう少しジェスに思いやりがあってもよかった。

最後の最後にミリーは一矢報いたかに見える。しかしこうした言動は、考えてみればごく当たり前のものだ。これによって今までの振る舞いを帳消しにすることはできないだろう。

本作は深刻な題材に正面から向き合おうとしたためか、ハリウッドではおきまりの気の利いた冗談はさほど見られない。

本作中、いくつか不自然なところがある。例えば、タクシーの運転手、ジェスが出産するときの電波の具合、そして最後の場面におけるキットの時を見計らったような入室、などだ。

エンドクレジッツが流れる際には、平原綾香の「STAR」が聴ける。ただ、曲自体は良いものの、編集で無理矢理突っ込んだ感が否めない。

本作は題材を生かし切れなかった。よほどのことがない限り、映画館で観る必要はないだろう。

監督 キャサリン・ハードウィック  出演 トニ・コレット、ドリュー・バリモア、ドミニク・クーパー、パディ・コンシダイン、ジャクリーン・ビセット、タイソン・リッター、ほか

1時間52分

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