「3びきのぶたたち」は、大人も置き去りにするほどの斬新さと豊富な含蓄を併せ持った、革新的な作品である。
昔々あるところに、富を築こうと世界へ飛び出した3匹の豚がいた。最初の豚はわらで家を建てた。そこへオオカミが一匹やってきて、こぶたちゃん、こぶたちゃん、中へ入れておくれ、と頼んだ。それに対して豚は、絶対やなこったい(=Not by the hair of my chinny-chin-chin)、と答えた。するとオオカミは、フーフー息を吹き入れて、お前の家を吹き飛ばしてやる!、と言って、わらの家を吹き飛ばしてしまった。
ここまでは元祖「3匹のこぶた」と同じ話なのだが、この後、ウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」もびっくりな、3匹の豚の暴走がはじまる。破天荒な本書の話は大人用の娯楽として面白いし、絵にも楽しむための工夫が施されている。けれどもそれだけではなくて、本書は、主体的に生きることの大切さを教えてくれる、教育的な1冊でもあるのだ。1匹目の豚が幸運を得た場面は受け身の姿勢に見えるけれども、自然な流れを作るためにはやむを得ない展開であっただろう。
本書は子供だけではなく大人が読んでも満足できる良作であり、購入したあなたに決して損はさせない。
作 デイヴィッド・ウィーズナー 訳 江國香織
文字数少ない
2002年コールデコット賞