マジック・アップル まほうのりんご 40点

「マジック・アップル まほうのりんご」は童話風のかわいらしい絵で安心感があるが、話自体は古典的で新鮮さに欠ける。

昔々、リーフ・ヴェイルと呼ばれる小さな村にポッターおばさんが住んでいて、ポッターの庭には1本のりんごの木が生えていた。木にりんごが実ると、ポッターはみんなに分けてやる。でも一番大きく赤いりんごだけは、感謝の気持ちを込めて必ず残すことにしていた。もちろん鳥たちがやってきて、”ありがとう・りんご”もそのうち食べられてしまうのだった。しかしある年のこと、鳥たちはありがとう・りんごを食べず、ありがとう・りんごはどんどん大きくなった。それを見た村長は、悪巧みで目を光らせる。議員たちを集めて会議を開き、ポッターのりんごの木の根は庭の外にはみ出ているはずだから、あのりんごの木はポッターだけのものではない、と主張した。そして役人たちと共にポッターの家へやってきて、ありがとう・りんごをもぎとり、手押し車に乗せて持ち去った。

本書を開いたときすぐに感じたのは、消毒液のような独特なにおいだ。しかし、たまたまそのように感じたわけではないようで、本書の後ろの方をめくると、本書は、りんごジュースのしぼりかすと古紙からつくられています、と書かれている。また本書の印税の50%は、森や林の保護と子供たちのために役立てられるとのことだ。

村長がりんごを徴収するための言い訳はなかなか気が利いており、物語の現代的な展開を予感させる。また、反村長派のランボー議員や変わり者のランキンばあさんの登場が話にほどよい刺激を与える。一方、絵は美しい水彩画で、とても色鮮やかに、丁寧に描かれている。またそれはディズニーの絵に少し似ていて、どこか漫画かアニメーションのような趣がある。

しかし本書の筋書きは、全体としてみれば非常に古典的であり、よくある昔話を焼き増したようなものだ。確かに話の前半は面白いのだが、後半はさほど盛り上がらず、結末は期待はずれに終わる。この本は処女作であるため仕方なかろうが、作者は他の絵本について十分な研究が出来ておらず、作品の差別化に失敗した。

本書は絵に優れているが、話は決して満足できるものではない。もし興味があるのなら、図書館で借りてみればよいだろう。

作 レイナー・サセックス  絵 デイヴィッド・ハイアム  訳 城田あい子 城田安幸

32頁 文字数普通 全文字かな

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