マドレンカ 50点

「マドレンカ」は独特な絵が特徴の優れた切り抜き絵本だが、国や地域の捉え方にやや偏りがある。

マドレンカはマンハッタンのアパートの4階に住んでいる。ちょうど今、歯がぐらぐらすることに気が付いて、みんなに知らせようと思い立つ。階段を駆けて降りて中庭へ出ると、大きな声でみんなに知らせる。うきうきはねて通りへ出ていき、フランス出身のガストンのパン屋へやってくる。歯がぐらぐらすることをガストンに伝えると、「Bonjourボンジュール, Madeleineマドレーヌ. そりゃ、おいわいしなくちゃね」と返してくれる。ガストンはいつもクロワッサンやフルーツケーキなどを焼く。そして、エッフェル塔や長靴を履いた猫のことなどを話してくれる。店の中を覗くと、そこには不思議なフランスの光景が広がっている。

本書はマドレンカがアパートを1周し、様々な国の出身者に会う様子を描く。チェコ出身の作者によって描かれた絵はとても独特であり、マンハッタンの一角が宇宙の中にぽっつりとあるような、不思議な描かれ方をしている。また、全体を通じて異国の文化が鮮やかに表現されており、視覚的に楽しめる仕組みも充実している。6カ国の挨拶を知ることが出来るのも、教育的に良いだろう。

ただ、本書は話が単調で、物語としては少し味気ない。そしてもう一つ問題なのは、世界が舞台である本書が、いかにも欧米人の視点から書かれていることだ。マドレンカは7人の知り合いに会って回るのだが、そのうち3人はフランス、イタリア、ドイツの出身である。そして残り4人のうち、エドワード、カームおばさん、クレオパトラの扱いは雑だ。彼らは、「エドワードは ラテンアメリカから やってきた」、「カームおばさんは アジアから やってきた」、「クレオパトラは 学校のともだち」と紹介され、ラテンアメリカ、アジア、あるいはアフリカ全体が彼らに託される。ガストンのところではフランス、シンのところではインド、チャオのところではイタリア、グリムおばさんのところではドイツ、をそれぞれ紹介したのだから、この書き方には疑問が残る。仮に作者が精通していない国があったとしても、一つの地域として大ざっぱにまとめず、丁寧に下調べをすべきだった。こういった作者の偏りは子供に伝わるものだ。

本書の独特な絵に触れることは、子供の視野を広げる上で有益であろう。しかし、本書は話に深みがなく、図書館で1度借りれば十分な作品だ。

作 ピーター・シス  訳 松田素子

40頁 文字数普通 全文字ふりがな付き

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