おやすみ、ロジャー 65点

「おやすみ、ロジャー」は子供を寝かせつけることに特化して書かれた、独特な絵本(?)である。

(本書に関しては本文を部分的に抜粋します。ふりがなは省略します)

太字の箇所は、言葉や文を強調して読む

色文字の箇所は、ゆっくり、静かな声で読む

むかしむかし、ロジャーという名前の小さなうさぎがいました。ロジャーは眠りたくてしょうがないのに、いますぐには眠れない子でした。ロジャーのきょうだいはみな、毎晩、おかあさんうさぎがおふとんに連れていくと、すぐに眠ってしまいました。でもロジャーは違います。横になって、いますぐ眠るかわりにやりたいことを、あれこれ考えていました。おそとで何をしようか、しばふの上で何をして遊ぼうか、ただ走りまわろうか……うんと疲れちゃうまで。そう、くたくたに疲れて、もう走りまわれなくなっちゃうまで。ロジャーは公園で朝から晩まで遊ぶことを考えていました。そして、ブランコの上で寝ちゃうのです。さあ。ロジャーを乗せて、ブランコが行ったり来たり、ゆーらゆら、ゆーらゆら、ゆっくり、ゆったり、ゆーらゆら。

この後、ロジャーはお母さんうさぎの不思議な言葉で眠らされそうになる。そして、世界一親切な魔法使い、あくびおじさんにみんなで会いに行きましょう、と言われる。途中、おねむのカタツムリやウトウトフクロウに出会って眠らされそうになる。そしてやっとあくびおじさんのうちに着くと、とっておきの魔法で眠らされそうになる。しかしまだ話は終わらない。これからうちに帰らなければいけないのだが、帰り道にはおねむのカタツムリとウトウトフクロウに再会してまた眠らされそうになる。疲れ果ててうちへたどり着くと、温かいベッドが待っている。

本書では心理学の知識が使われているらしく、ここまで書いただけで私は非常に眠くなった。また、これも心理学の応用と思われるが、本書は非常に長く、そのため最後まで読み通すとかなり疲れて眠くなる。だから、子供が本書の朗読に抵抗せず耳を傾けてくれれば、眠る可能性は高いと思う。本書以前に子供を寝かしつけることに特化した絵本はなかっただろうから、本書は新規性という観点からは高く評価できる。

しかしながら、本書を子供に読む際には、ぜひ心理学について言及して欲しい。心理学という学問があること、大学でも教えられていること、本書が子供を眠らせるために心理学を用いて書かれたこと、など、いろいろと考えられる。そうすれば、教育的な意味でも、本書から子供が学ぶことは大いにあるはずだ。他方、本書に物語としての価値はあまりない。だから、もし親が子供に何も伝えず、ただ本書を読み聞かせて眠らせるだけだったら、子供の貴重な時間と教育の機会を奪うことになる。子供の脳は3歳くらいまでに大人のそれの約8割にまで発達するらしい。私の経験からいえば、大人になってからの勉強では、知識は増えるものの、根本的な能力はほとんど向上しない。だから、幼児期の教育は、私たちが考えている以上に重要なのではないだろうか。

本書の発想は独特で面白いが、その使い方には注意が必要である。図書館で一度借りればよいだろう。

作 カール=ヨハン・エリーン  監訳 三橋美穂

27頁 文字数多い 簡単な漢字を除いてふりがな付き

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