「SCOOP!」はパパラッチを主役に据えた意欲作だが、その際に生じるオチの問題を克服するには至らなかった。
夜薄暗い中、静(=福山雅治)は服を着たままSUVの後部座席で女と性交渉に勤しむ。それが終わると前部座席に移り、煙草をくゆらせ、女に金を渡す。女は静に声をかけ、SUVから降りる。SUVは明治神宮球場の出入り口前に着けられており、出入り口からは1台の車が出てくる。静はSUVを発車させ、出てきた車を追跡する。同じ日の昼間、ある出版社の編集部に、髪を染めて縁なし帽子をかぶった、新人の野火(=二階堂ふみ)がやってくる。野火は編集者の定子(=吉田羊)に現場での取材を命じられる。一方、静の追っていた車はある建物の前で止まる。車から2人の男が出てきて建物に入る。静はその様子を写真に収め、SUVから降りて建物の中へついてゆく。そこは風俗店のようだ。店員に話しかけながら男たちの位置を確認し、カウンター席に座る。男たちがテーブル席で女性店員に囲まれているのを見ながら、隠しカメラを向けて数枚撮影する。もう少しで良い写真が撮れそうだという、まさにそのとき、男たちのテーブルの前に野火が突然現れ、取材を申し込む。
ネタバレなしの感想
本作はパパラッチの生き様を描いた斬新な作品であり、その目の付け所は高く評価できる。しかしながら、パパラッチを主役としたことでいくつか問題が生じる。前半は良いだろう。パパラッチの仕事には手に汗握る緊張感や上手くいったときの高揚感があるに違いなく、雑誌が出版されてからの世間の反応も見逃せない。しかし、パパラッチの目標はせいぜい芸能人、スポーツ選手、政治家、といった程度で数に限りがある。だからパパラッチ本来の仕事だけでは映画を持たせることが出来ず、必然的にどこか別の方向に向かわなくてはならない。政治や経済などの汚職事件を扱って最後まで引っ張ることはとりあえず考えられる。しかし本作はそういった選択をせずに、より地味な社会方面へ進む。ただ、これは単発であっさりと終わってしまい、映画にオチが付かない。そこで本作は半ば強引にハリウッドのような場面を移植するのだが、これがあまりに突拍子もなく始まり、またそこからの展開も人工的すぎて、まるで自然さがない。私はそれを観ていて、脚本家が困っている姿がありありと目に浮かんだ。そして、作品の終わらせ方にも疑問が残る。福山を写せば観客は喜ぶのかもしれないが、結局本作は何を描きたかったのだろう。俳優たちは何のために熱演したのか。
本作は大変優れた主題を選んだものの、残念ながら竜頭蛇尾に終わった。しかしパパラッチを描いた映画はめったにないだろうから、興味があれば観にいってよいと思う。
原作映画 「盗写 1/250秒」 監督 大根仁 出演 福山雅治、二階堂ふみ、吉田洋、滝藤賢一、リリー・フランキー、ほか
1時間59分