「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」は、世間を欺くマジシャン集団フォー・ホースメンとFBIの攻防を描いた「グランド・イリュージョン」の続編である。前作はまずまずの出来であったが、今作の台本は恐ろしく悲惨であり、優秀な俳優たちの熱演も痛々しい。
前作でフォー・ホースメンの1人ヘンレイを演じたアイラ・フィッシャーは、伝えられるところによると、撮影が妊娠期間に重なったため降板となった。そこで、本作ではリジー・キャプランが新たな構成員ルーラ役を演じることとなるが、その交代の説明はあまりにあっさりしていて、観ている私たちは狐につままれた気分になる。
フォー・ホースメンとFBI捜査官ディラン(=マーク・ラファロ)は一年ぶりに秘密結社(?)アイ(=the eye)の下集結する。今回のアイからの指令は、ニューヨークで開かれるIT企業オクタ社の講演を乗っ取り、彼らが行った不正を世間に知らしめることだった。現場に侵入したフォー・ホースメンたちは、まずオクタCEOに催眠をかける。そして超満員の会場で中継映像を流してCEOに不正を告白させ、ど派手な演出と共にステージに現れる。しかし外の様子がおかしい。どうも情報が事前に漏れていて、すでに会場はFBIに取り囲まれているようなのだ。フォー・ホースメンは慌てて会場を後にし、逃走を図るのであった。
ネタバレなしの感想
ここまで聞けば、なんだ面白い映画ではないか、と思うかもしれない。そう、ここまではよかった。しかしこの後、B級ハリウッド映画で何度も観せられたような、あまりにお粗末な展開が待っている。
まず、この映画は脚本がひどい。本作では(前作にも増して)非常に頻繁に催眠が登場し、マジック(?)の種明かしは「催眠にかけて誘導しました」ばかり。そして、最後大一番の仕掛けは、非常に雑な力業である。また、序盤マカオのくだりもいただけない。ハリウッドは続編で行き詰まると、すぐに中国、日本、ヨーロッパ、などを出してきて、大抵、その地でマフィアと争わせる。似たような映画ばかり作っても仕方ないであろう。細かい点においても、実はこの人は仲間でした、など、これまたどこかで観たような場面が散見される。
そして、この映画は演出もひどい。演出家不在であるかのような場面が多くあり、そんなとき俳優たちは苦しそうで、アクターズ・スタジオの学生たちのように見える。また、トランプカードの投げ渡しを延々と繰り返す場面などは、あまりにわざとらしく助長である。
ちなみに、前回登場したインターポール捜査官のアルマ(=メラニー・ロラン)は今回不在だ。
もしあなたが前作の熱烈な支持者でないならば、今週末に本作を観る理由はないであろう。
監督 ジョン・M・チュウ 出演 ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ダニエル・ラドクリフ、ほか
2時間9分