ハドソン川の奇跡 55点

「ハドソン川の奇跡」はイーストウッドが撮った作品の中で最も地味なものである。

旅客機が低空飛行し、マンハッタンのビルに突っ込む。操縦士のサリー(=トム・ハンクス)はホテルのベッドで悪夢から目覚める。翌朝、制服に着替え、副操縦士のジェフ(=アーロン・エッカート)と共に、ホテルの小さな一室でNTSB(=National Transportation Safety Board)の面々と対峙する。NTSB調査官のポーター(=マイク・オマリー)は、昨晩はよく眠れたか、と切り出し、サリーは、上々、と答える。ポーターは続けて、酒はいつ飲んだか、家族の問題はあったか、など、次々に質問を投げかけるが、サリーはひとつひとつ毅然と答えてゆく。さらにポーターは、エンジンが両方停止するなど一度も聞いたことがない、なぜハドソン川に衝突したのか、と強い口調で追求する。サリーは、着水は自分の40年以上の経験を元に瞬時に判断した、と言い、ジェフも加勢するが、経験という言葉に調査官たちが納得する様子は見られない。そして、ポーターがコンピューターで状況検証することを告げると、サリーは、そのデータを自分で確認したい、と言う。

ネタバレなしの感想

私は実際のNTSBの調査がどのようなものだったかを知らないから、本作における彼らの描き方が妥当かどうかはわからない。しかし、本作のように明らかな悪者を作ってそれを後々解決するというやり方は、ハリウッド映画ではよく見られる。だから、本作の筋書きはイーストウッドが選んだにしては少し安易に感じる。ただ好意的に見るなら、事件を忠実に描こうとしたことで、ネタが苦しくなったのかもしれない。

本作は映画には珍しく、予告編から想像される通りの作品である。全体にあまり起伏がないし、最後に大どんでん返しがあるわけでもない。ただ淡々とサリーの心境の変化を描いていく。そのため、本作からはやや淡泊な印象を受けるが、こういった余計なものが加わっていない作品は意外に珍しい。

イーストウッド特有の雰囲気がさほど感じられない本作であるが、無駄のない簡潔な表現は評価できる。映画館で観てもよいと思う。

監督 クリント・イーストウッド  出演 トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、ほか

1時間36分

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面白い映画のレクタングル(大)
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