「レッドタートル ある島の物語」は話の設定にやや無理があり、脚本が消去法で書かれた感は否めない。
海は大きく荒れ、1人の男が波にもまれながら水面を漂っている。男の小さなボートは転覆したようだ。そして嵐が静まると、男は砂浜に打ち上げられている。目を覚まし砂浜を歩く。どうやらそこは小さな島らしい。内陸へ進むと竹林があり、そこにある水たまりの水を飲む。南国風の木があり、それに登って大きな木の実を落として食べる。林を抜けると海を見下ろす絶壁に出るが、足を滑らせて海に落ちる。そこは高い岩に四方を囲まれていたが、水中を泳いで何とか外海へ出る。海を泳ぎ砂浜に戻ってくるものの、人は見当たらない。
ネタバレなしの感想
無人島で孤立した男を描く本作はこの後どうなるだろうか。もし途中で船やヘリが助けに来たら、過去のハリウッド映画とあまり変わらない。筏を作って脱出に成功する場合も似たようなものである。だが永遠と男が1人で島にいる様子を描き続けるわけにもいかないだろう。それではあまりに退屈である。では動物と仲良くなるか。しかし、もっと何か人間的な要素が欲しい。そうなれば、取れる手段は限られてくる。
また、島での生活がいつも順風満帆だと観ている方は物足りない。ではどのような困難を与えればよいだろうか。ここで地平線から船がやってくるのはハリウッドだ。では病気や大けがはどうか。いや、孤立した男の力ではそれに対処できないだろう。加えて、それは見た目にも地味だから、無人島映画にはふさわしくない。よって、ここでも手段は限られる。
結末も同様だ。作品の流れからすると、考えられる選択肢は本質的に1つしかない。本作は孤立した人間の営みを描こうとする。
上記の問題を除いても、本作の脚本は突っ込みどころ満載である。しかし、映像はジブリとしては新鮮みがあり、音楽は美しく、効果的に使われる。
本作の完成には10年が費やされたという。ただ、映像や音楽や俳優がいかに優れていても、脚本が不出来ならば映画を良作に仕上げることは難しい。本作は観にいってもよい作品だが、おそらくあなたは満足しないだろう。
監督 マイケル・デュドク・ドゥ・ビット
1時間20分