ママがおばけになちゃった! 50点

日本人作者による丁寧な絵が特徴の「ママがおばけになちゃった!」であるが、もう少し教育的な要素が欲しかった。

母親は交通事故に遭って死んでしまい、お化けになる。4歳の息子、かんたろうのことが気になって家まで飛んでゆく。そこではかんたろうが、母親はどこに行ったのか、と祖母に尋ねている。祖母は、もう空の上に行って帰ってこない、と言う。それを見た母親は彼らに呼びかけるが、十分に伝わらない。そしてかんたろうは、たくさん母親に嘘をついていたことや、母親にいたずらをしたことなどを祖母に打ち明ける。祖母はそんなかんたろうをなだめるが、母親はかんたろうに一言言いたくて仕方ない。

本書は主に母親の視点から描かれており、母親の息子に対する気持ちがよく表れている。また色鉛筆などで描かれた絵はとても細やかで日本人の作品らしい。中でも母親の表情はかわいらしいから、本書の主題と相まって、私たちは母親がとてもいとおしい。

もう二度と母親に会えない、息子と話せない、というのはきわめて切実な状況であるはずだが、本書は全体に緊張感が感じられない。また、母親は死にました、息子のことが心配です、だから息子と自由に話せます、ではどうしようもない。限られた人生をいかに生きるか、そして身の回りの人たちがいなくなったときにどのように受け入れるか、それを考えさせることが大切ではないか。それに、もう二度と会えないかもしれない息子に対して母親がかける言葉が、おまりのあれでよいだろうか。本書では、あなたが大好き、ありがとう、というように、息子を肯定する言葉が目立つ。しかし、子供は非常に未成熟であり、平気で動物を殺したり、周りの子供をいじめたりする。だから、我が子の将来思う戒めの言葉があってもよかった。あるいは、今は理解できなくても大人になってから思い出して欲しい、というような、もっと深い言葉を伝えることも出来ただろう。

本書からは母親の息子に対する強い愛情が感じられるが、母親自身が発展途上にある印象を受ける。繰り返し読むものではないが、一度図書館で借りてみるのもよいだろう。

作 のぶみ

32頁 文字数普通 全文字かな

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