雪の写真家 ベントレー 85点

ある写真家の生涯を描いた「雪の写真家 ベントレー」は、涙なしには読めない良作である。

その昔、アメリカのある農村に生まれたウィリーは、雪が何よりも美しいと思っていた。蝶だったら網で捕まえて見せてあげられるし、林檎の花なら摘んで見せてあげられる。でも、雪はそうはいかない。母親から古い顕微鏡をもらった彼は、身近なものの観察を始めた。他の子たちが雪玉を投げて遊んでいるときも、1人で雪の結晶を観察した。顕微鏡で見る雪の結晶は、思っていたよりも細やかで美しい姿をしており、同じ形をしたものは一つもなかった。その美しさを何とかしてみんなにも知ってもらいたいと考え、ウィリーはまずスケッチをしてみた。3度の冬に渡って何枚も書いたが、雪はいつもスケッチが出来上がる前に溶けてしまった。16歳になったウィリーは、本を読んでいて顕微鏡付きのカメラがあることを知り、母親にそれついて打ち明けた。父親は雪に夢中になっているウィリーを少し心配していたが、両親共に、ウィリーの気持ちはよくわかっていた。そしてウィリーが17歳の時、大金をはたいてカメラを買うことに決めた。

本書を読んで私たちはまず、ウィリーの鋭い感性に驚かされる。確かに雪の結晶は美しいのだが、雪自体はとてもありふれているから、その美しさを探究する者は滅多にいないと思う。「朝露を宿した草の葉や、真珠のネックレースのように露をまとった、美しいクモの巣」はどうだろう。それらは言われてみれば確かに美しけれど、いつも身近にあるから、その本当の美しさに気がつかないのだ。さらに驚くべきことに、ウィリーのみずみずしい感性は成長しても衰えず、ウィリーは生涯身近な自然の写真を撮り続けた。しかも一貫して農夫であり、大学での席や大きな収入を求めて写真を撮っていた訳ではないと思う。ウィリーの純粋に美を追究する姿勢は、本書最後に掲載されている本人の言葉からも感じられる。

しかし、さらに素晴らしいのは、ウィリーの希望を叶えて顕微鏡付きカメラを買い与えた両親である。カメラはとても高価だったし、彼らは裕福だったわけではない。しかしウィリーが何年も雪の結晶をスケッチする姿を見て、その姿勢に応えたのだ。もしウィリーに理解を示さなかったなら、ウィリーは何も成し遂げられなかったかもしれない。

本書は、主人公の類い希なる感性に驚嘆させられる1冊である。購入する価値は十分にあると思う。

文 ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン  絵 メアリー・アゼアリアン  訳 千葉茂樹

文字数多い 簡単な漢字を除いてふりがな付き

1999年コールデコット賞

スポンサーリンク
面白い映画のレクタングル(大)
面白い映画のレクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
面白い映画のレクタングル(大)