「ヨセフのだいじなコート」は発想豊かな切り抜き絵本である。
春、色とりどりの花が咲く畑で、ヨセフはコートを着て七面鳥やガチョウを放牧していた。でもコートはあちこちすり切れて、継ぎを当てられていた。そこでヨセフは継ぎのあった部分を切り外し、コートをジャケットに作り替えた。そしてそれを着て、村祭りに出かけた。夏、野菜で一杯の畑で、ヨセフはジャケットを着て牛の乳搾りをしていた。でもジャケットはあちこちすり切れて、継ぎを当てられていた。そこでヨセフはジャケットをチョッキに作り替え、姪の結婚式に着ていった。
本書の面白さはなかなか文章では伝わらない。上でいえば、コートを着たジョセフの絵は見開き左頁に書かれており、そのコートの継ぎのない部分がそのまま2頁先のジャケットになるように、見開き右頁の一部が切り抜かれている。どんどん小さくなってゆくヨセフのコートだが、右頁の切り抜かれた部分を見ながら、次は一体何に変わるのだろうかと考えるのは面白い。読みながら、ちょっとしたパズルを解いているような気分になる。本書の絵は継ぎ接ぎで作られたような独特の味わいがあるが、詳しく見てみると、どうやらヨセフはユダヤ系ポーランド人らしい。ヨセフには時々妹から手紙が届くし、所々で新聞の記事や名言(?)を見ることもできる。
本書は楽しく読める仕掛け絵本だ。ぜひ図書館で借りて読んでみたい。
作 シムズ・タバック 訳 木坂涼
文字数少ない 全文字かな
2000年コールデコット賞