文字のない絵本「漂流物」であるが、絵を丹念に追っていけば、独特な楽しい物語が展開する。
ある天気のよい日、砂浜で様々な漂流物を集めては観察する金髪の少年がいる。少年が波打ち際でカニを見つけ、手に取ろうとしたまさにそのとき、大きな波が来て少年は飲み込まれてしまう。そして波が引くと、1台の水中カメラが目の前に打ち上げられている。周りの人々にたずねても、誰のものだかわからない。そこで、カメラを開けてみると、中にはフィルムが入ってる。
写真にはカメラの前の持ち主が写っていただろうか。いや、それだけではつまらない。では、前の持ち主と、さらにその前の持ち主が写っていただろうか。でも、過去の持ち主が、1人、2人、3人、4人、5人…とたくさんいたら、フィルムが足りないかもしれない。いや、そもそも、前の持ち主だって、見つけたフィルムを現像したのではないか。
もう少し話に広がりが欲しかったものの、子供が浜辺で遊ぶ幸福な時間と偶然がもたらす不思議、その2つを言葉なしで巧みに描いた本書は、なかなかの力作といえる。また、絵を追いながら物語を想像していく過程は頭を使うから、脳の発達にはよいかもしれない。
本書は購入するほどではないけれど、図書館で借りる価値のある1冊である。
作 デイヴィッド・ウィーズナー
40頁 文字なし
2007年コールデコット賞