今回は最近(?)若者の間で流行っている「やばい」について、意味や語源の由来を調べていきます。
意味
危ない、危険である。良くない、まずい、不都合だ。(『暮らしのことば新語源辞典』)
すごく良い、素晴らしい(若者言葉)。(『この日本語の語源を知っていますか?』、『答えられそうで答えられない語源』)
語源
もと盗人などが法に触れることをして身に危険が迫っている場合に使う隠語。江戸時代には「危ない、不都合だ」の意味を表す「やばな」という形容動詞があり、主に関西地方で使われていた。この「やばな」が形容詞化して「やばい」となり、明治になって隠語として文献に現れ、やがて一般に広まった。(『暮らしのことば新語源辞典』)
「やば」の語源は以下のように諸説あるようです。
「厄場(やば)」説
『上方語源辞典』によれば、「やば」は牢屋の意味で「やくば(厄場)」から転じたもの。また厄場は、劇場、寄席の警官臨検席の意味であるという。(『新明解語源辞典』)
「野馬(やば)」説
「野馬(やば)」とは「危険な馬」の意味。(『日本語源広辞典』)
「矢場(やば)」説
「矢場(やば)」とは「遊戯場」の意味。表向き矢場で売春宿の「やば」は取り締まりが多く、特に憲兵に追われたときの隠語に「やばい」が使われることが多かったようだ。(『日本語源広辞典』)
まとめ
「やばい」は多くの本に掲載されていましたが、「野馬説」と「矢場説」に言及していたのは『日本語源広辞典』だけでした。
今回は、これが一番自然、と感じられる説がない気がします。
「野馬説」は「野馬=危険な馬」という意味では直接的ですが、それを盗人たちが追手から逃れる際に使うでしょうか。
「厄場説」と「矢場説」は警官などと結びついていますが、意味的にはやや間接的であり、盗人が用いるには少々おしゃれすぎる気もします。
ただいずれにしても江戸時代あたりに使われはじめた割と新しい言葉のようなので、いろいろと文献を調べれば確証が得られるかもしれません。
「やばい」が「すごく良い」などの肯定的な意味で用いられはじめたのは、比較的自然な流れではないでしょうか。「やばい」には「危ない」という意味がありますから、それが転じて誇張表現になったんですね。英語でも「terribly attractive」といった使い方ができるようです。
今回は以下の本を参考にしました。
調べた語源関連書籍 | 掲載の有無 |
日本語源大辞典(小学館) | × |
[増補版]日本語源広辞典(ミネルヴァ書房) | ○ |
語源海(東京書籍) | × |
語源大辞典(東京堂出版) | ○ |
新明解語源辞典(三省堂) | ○ |
暮らしのことば新語源辞典(講談社) | ○ |
決まり文句語源辞典(東京堂出版) | × |
日本語語源辞典 第2版(学研) | ○ |
語源を楽しむ(KKベストセラーズ) | × |
身近なことばの語源辞典(小学館) | ○ |
常識として知っておきたい日本語(幻冬舎) | × |
オツな日本語(日本文芸社) | × |
ことばの由来(岩波書店) | ○ |
日本語語源の楽しみ[一](グラフ社) | × |
正しいのはどっち?語源の日本語帳(永岡書店) | × |
答えられそうで答えられない語源(二見書房) | ○ |
日本語の「語源」ものしり辞典(大和出版) | × |
この日本語の語源を知っていますか?(河出書房新社) | ○ |
そうだったのか!語源の謎(河出書房新社) | × |
この言葉の語源を言えますか?(河出書房新社) | ○ |
猫ばばの謎(河出書房新社) | × |
[語源]の謎にこだわる本(雄鶏社) | × |
日本語謎解き事典〈慣用句編〉(KKベストセラーズ) | × |
語源 面白すぎる雑学知識(青春出版社) | × |
語源 面白すぎる雑学知識 Part2(青春出版社) | × |
語源 面白すぎる雑学知識 Part3(青春出版社) | × |
語源 面白すぎる雑学知識 Part4(青春出版社) | × |
知っ得 衣食住のことば語源辞典(日本漢字能力検定協会) | × |
主要な辞典の中には「やばい」を掲載していないものもありますが、雑学本における取り扱いは比較的多かったです。