今回は「(左)ぎっちょ」の意味と語源について調べていきます。一部によると「(左)ぎっちょ」は左利きを意味する差別用語とされていますが、昔はどうだったのでしょうか。ついでに、酒飲みが「左利き」といわれる理由についても探ります。
意味
左利き。(『日本語源大辞典』)
「(左)ぎっちょ」は「ひだりぎっちょう」の約。(『新明解語源辞典』、『語源海』)
語源
「左器用(ひだりきよう)」説
「左器用(ひだりきよう)」の転。(『日本語源大辞典』引く所の『大言海』、『音幻論(幸田露伴)』、『国語拾遺語源考(久門正雄)』)
『大言海』は、「不器用」が「ぶきっちょう」に転じたと同じように、「左器用」が「ひだりぎっちょう」に転じたとする。日常的に口にしているうちに変化しそのまま書き言葉として通用するようになり、さらに文字化された。
1603~04年に長崎で発行された日本語-ポルトガル語辞書の『日葡辞書』に「ひだりぎっちょう」の項目があり、「卑語」と注記してある。(以上『新明解語源辞典』)
「左几帳(ひだりきちょう)」説
「左几帳(ひだりきちょう)」の転。(『日本語源大辞典』引く所の『語簏(ごろく)』、『俚言集覧(太田全斎)』)
「毬杖(ぎっちょう)」説
「毬杖(ぎっちょう)」とは、木製の鞠(まり)を槌形(つちがた)の杖で打ち合う遊戯。また、その杖。新年を祝う行事として子供によって行われる。(『例解古語辞典[第3版](三省堂)』、『広辞苑 第5版(岩波書店)』)
左利きの人が「毬杖」を左手に持ったことによる。(『ウィキペディア「毬杖」』)
酒飲みはなぜ「左利き」か
酒飲みが「左利き」と呼ばれるのは、ノミ(鑿)をあつかう左利きの職人、ことに金鉱を掘る人が、利き手である左手を「ノミ(鑿)手」といったのを「飲手」にかけたもの。(『日本語源大辞典』引く所の、『話の大事典(日置昌一)』、『すらんぐ(暉峻康隆)』引く所の『屠竜工随筆(小栗百万(旨原))』)
まとめ
「(左)ぎっちょ」の例文が最も多く載っていたのは『語源海』、次いで『新明解語源辞典』でした。
はっきりとした語源はわからないものの、上の説明を見るかぎりでは「左器用」説が最も合理的ではないでしょうか。
ななぞうは不勉強なため、「左几帳」説はよく理解できませんでした。昔、左利きの人は几帳を自分の左側に置いたのかもしれません(的外れの可能性大)。
「毬杖」説からは若干取って付けたような印象を受けます。左手で刀を持っていたら「左刀(ひだりがたな)」になったでしょうか。
ただ一つ確かなことは、「(左)ぎっちょ」は1600年頃にはすでに卑語として使われていたということです。
しかし、もしも「左器用」説が正しいとすれば、本来の「(左)ぎっちょ」にはおそらく差別的な意味は含まれていなかったと思います。言葉から受ける印象は時代と共に変わっていくのかもしれません。
今回は以下の本を参考にしました。
調べた語源関連書籍 | 掲載の有無 |
日本語源大辞典(小学館) | ○ |
日本語源広辞典(ミネルヴァ書房) | ○ |
語源海(東京書籍) | ○ |
語源大辞典(東京堂出版) | ○ |
新明解語源辞典(三省堂) | ○ |
暮らしのことば新語源辞典(講談社) | × |
決まり文句語源辞典(東京堂出版) | × |
日本語語源辞典 第2版(学研) | × |
語源を楽しむ(KKベストセラーズ) | × |
身近なことばの語源辞典(小学館) | × |
常識として知っておきたい日本語(幻冬舎) | × |
オツな日本語(日本文芸社) | × |
ことばの由来(岩波書店) | × |
日本語語源の楽しみ[一](グラフ社) | × |
正しいのはどっち?語源の日本語帳(永岡書店) | × |
答えられそうで答えられない語源(二見書房) | × |
日本語の「語源」ものしり辞典(大和出版) | × |
この日本語の語源を知っていますか?(河出書房新社) | × |
そうだったのか!語源の謎(河出書房新社) | × |
この言葉の語源を言えますか?(河出書房新社) | × |
猫ばばの謎(河出書房新社) | × |
[語源]の謎にこだわる本(雄鶏社) | × |
日本語謎解き事典〈慣用句編〉(KKベストセラーズ) | × |
語源 面白すぎる雑学知識(青春出版社) | × |
語源 面白すぎる雑学知識 Part2(青春出版社) | × |
語源 面白すぎる雑学知識 Part3(青春出版社) | × |
語源 面白すぎる雑学知識 Part4(青春出版社) | × |
知っ得 衣食住のことば語源辞典(日本漢字能力検定協会) | × |
「(左)ぎっちょ」は難しい言葉のようで、残念ながら雑学本には載っていませんでした。