「かようびのよる」は妄想を具現化したような作品で、発想は面白かったが、全体的にやや物足りない。
火曜日の夕方、沼地に浮かぶ流木の上に亀が座っている。あたりは次第に暗くなっていく。蛙たちは蓮の葉の上で休んでいる。そして夜8時になる頃、蛙たちが乗っていた蓮が一斉に宙に浮きはじめる。すると蛙たちは空を飛んでどこかに向かいはじめ、それを見た亀は驚いて頭と手足を甲羅の中に引っ込める。彼らは湿地や森を抜け、町の方を目指す。町に着いたとき、その群れは驚くべき大群になっている。
本書の発想は斬新で、本書が出版された当時、蓮の葉に乗って空を飛ぶ蛙の集団を描いた絵本はなかったと思う。なんだか漫画のような話だが、蛙たちの絵が本物のように描かれていて、それが集団で町に押し寄せる様子はなんとも面白い。
ただ、欲をいえばもう少し物語に工夫があってもよかったと思う。それに、何となくはじまったかと思えばあっという間に終わってしまう。全体的に非常にさらっとしていて、あまり読み応えがない。
本書の見返しに「このできごとは あるかようびに アメリカの とあるまちで じっさいに おこったことです。」と書かれているが、これは単なる演出と思われる。コーエン兄弟の「ファーゴ」と同じだろう。作者はもともと蛙の絵に思い入れがあったため、何か蛙の登場する絵本を書こうと思い、本書の筋書きを考え出したそうだ。
では、なぜ「かようび」なのだろうか。これも特別な理由はなかったようで、週における火曜日の印象と、”T-u-e-s-d-a-y”というにじみ出るような音から決めたらしい。
作者のコールデコット賞受賞演説→ Why Frogs? Why Tuesday?
本書は、買うほどではないけれども、図書館から借りて読んでみたい1冊である。
作 デヴィッド・ウィーズナー 訳 当麻ゆか
30頁 文字ほとんどなし 全文字ひらがな
1992年コールデコット賞