母と子の朝の風景を描いた「おきる じかんよ!」は、子供の精神的発達を阻害しかねない問題作である。
朝、母親は息子のサムを起こそうとする。サムはぐずぐずしているが、母親は優しく語りかけたり、接吻をしたりして、なんとかサムを起こそうと試みる。それでもサムはベッドから出ないから、母親はサムの毛布をはいでしまう。しかし、依然としてサムは毛布を引っ張ってぐずり続ける。そして、やっと起きたとか思えば、今度は母親をくすぐろうとしたり、背中を押して歩かせてもらおうとするのだった。
会話や働きかけは一方通行でなく、母と子の掛け合いがおもしろい。また、彼らの一言一言に絵を付したことによって、本書にはサイレント映画のような独特の味わいが生まれた。
しかしながら、本書の話には独自性がないし、教育的観点から見ても上手く書かれているとはいえない。母親はサムに非常に甘く、手取り足取りなんでもやってあげている。そして、サムも母親に甘えっぱなしだ。しかし、サムの背丈は母親のみぞおちあたりまであるから、本当に小さい子供というわけではないのだ。このような風景は決して子供の模範にはならないだろう。
本書は大人が読むべきで、あなたがもし気になるのなら、図書館で借りれば十分である。
作 マリサビーナ・ルッソ 訳 ほしかわなつよ