「ひみつだから!」は子供が描いたような楽しい絵が特徴だが、話は単純すぎて少し味気ない。
マリー・エレインのうちにはマルコムという猫がいた。マルコムは毎晩外に出かけ、朝になると帰ってくる。そして昼間はずっと寝ている。マリー・エレインは、マルコムが夜になるとどこへ行くのか気になっていた。夏の夕方、マリー・エレインは冷蔵庫から冷たい飲み物を出そうと思って、台所へ降りていった。すると、猫の出入り口のそばに、マルコムがいた。すっかりおめかしをして、帽子までかぶっている。マリー・エレインが、どこへいくの、とマルコムに聞いた。マルコムは、パーティーへ行くけど、どこかは言えない、秘密だから、と答えた。マリー・エレインは、一緒に連れていって、お願い、と頼んだ。するとマルコムは、じゃあ、パーティーらしい格好に着替えてきて、と言った。そこでマリー・エレインは急いで2階の部屋に戻り、パーティーの格好をしてきた。マルコムはそれを見て、まあ、いいでしょう、あとは、小さくなれば、と言った。マリー・エレインは小さくなって、マルコムと一緒に猫の出入り口から飛び出した。
小さくなって猫と一緒にパーティーへ行く、という本書の設定は少し変わっていて面白い。中盤には3匹の犬たちが出てきて、話にちょっとした緊張感を与えてくれる。また、パーティーに重要人物をもってくるあたりは、いかにもイギリス人の作家らしい。絵はほどよく大ざっぱな現代アート風で、後半になると少し複雑で凝ったものになる。全ての絵の中でも、特に、マリー・エレインたちが「イヌが ついてこられないみち」を通る様子や、朝日に手を振る姿は、とても印象的に描かれている。
しかし、本書の話は少し淡泊で、読み終わった後に物足りなさが残る。マルコムは長靴を履いた猫のようで頼もしいが、本書はおとぎ話風の筋書きにしては大胆な展開もなく、何も起こらずに終わってしまう。パーティーでもう少し話の発展があれば、本書の印象はだいぶ違っただろう。また、せっかく登場したノーマンがほとんど役割を果たしていないのも残念なところだ。日常におけるささやかな冒険を描いた、という点で本書の話は評価できるが、読者を楽しませるためには、もう一段の工夫が求められる。
本書は物語としては今一歩だが、絵は現代アート風で見る価値がある。図書館で借りて読んでみたい。
作 ジョン・バーニンガム 訳 福本友美子
41頁 文字数普通 全文字かな