みなさんは新聞配達のバイトに興味がありますか?今までにやったことのないバイトについては、業務内容なんてわかりませんよね。そうすると必然的に、時給や時間などでバイトを選ぶことになると思います。
ななぞうが以前に住み込みでバイトをしていた新聞配達所では
月給 12万円(税引き前)
勤務時間 深夜2時半から朝6時(朝刊目安)、午後2時50分から5時(夕刊目安)
配達方法 自転車
休日 週1回+日曜夕方+新聞の日(あっても月1回)
+ボーナス休み(前月の配り忘れが2回以内のときのみ1回もらえる。ただし、夕刊が休みの日曜に当てられることもしばしば)
その他 寮費無料(ガスと風呂はなし。トイレは共同)、それ以外の福利厚生(例えば保険等)はなし。
となっていました。
ちなみに、祝日は休みではありません。お盆、ゴールデンウィーク、年末年始等も出勤です。大雨や台風のときも、もちろん仕事はあります。
ななぞうは詳しく計算していないのですが、同僚によると時給はおおよそ1000円くらいとのことでした。月給は固定ですから、早く配ればそれだけ時給は上がります。
でも自転車での新聞配達は過酷ですから、早く配るとその分余計に体力を消費します。朝刊が配り終わればそれで終わりではなく、またすぐに夕刊、そして翌日の朝刊…、というサイクルが永遠に続きますから、自分の体力を上手く管理しなくてはなりません。
ななぞうはかつて学生の頃、よく昼食時に牛丼屋を利用していました。ものすごい速さで客の注文を捌いていく店員の姿を見て、牛丼屋のアルバイトはつらそうだなあ、と思いました。
深夜にコンビニなどを利用したときも同じように感じました。深夜に働かされたら人間の体内時計は狂ってしまい、日中にも影響が出ます。
しかし自転車で新聞配達をしてからは考えが変わり、牛丼屋や深夜のコンビニは楽そうでいいなあ、と思うようになりました。それほど自転車による新聞配達は過酷です。
ですから、ななぞうは自転車で新聞配達をすることを決して薦めません。人と話さなくていいから気楽、などという安易な気持ちで申し込まない方がいいと思います。
それでもどうしてもやりたいという場合は、配達前に新聞にチラシを挟む作業がない案件を選んだ方がよいです。配達所によっては、チラシを挟む専門のバイトが雇われていることがあり、配達員がこの作業をする必要がありません。新聞にチラシを挟む作業は思いのほか体力を消耗しますから、注意が必要です。
自転車による新聞配達の現実を説明するため、ななぞうの体験を以下に記しました。新聞配達所でアルバイトをしようか迷っている人には、きっと参考になると思います。
学校を退学
ななぞうは途中までごく普通の人生を歩んでいましたが、あるとき専攻を替えようと思い立ち、学校を辞めてしまいます。
そして、どうしても勉強したかった分野を一から独学で習いはじめました。
自分の部屋からも退出し、新聞配達の道へ
勉強は順調に進んだものの、新しい専攻は難しく、頭の悪いななぞうは速く進めることができません。そうこうしているうち両親の我慢も限界に達して、ななぞうは家を出ることになります。
当然、奨学金などもありませんから、ななぞうは無一文です。そこで、住み込みで働ける新聞配達の仕事をはじめました。
配達方法
ただ、ここでななぞうは重大な間違いを犯しました。自転車による配達を選んでしまったのです。
しかも、順路には坂が多かった。自分の住む家の周辺が平坦だったこともあり、坂が多いかどうかなど、応募するときに考えていませんでした。
ななぞうは学生時代にいくつかアルバイトをしましたが、それらは全て室内にいられる生やさしいものばかりで、いわゆる肉体労働はしたことがありませんでした。当時はトイレットペーパーのカートを押すのが重労働だと思っていたほどです。
寮費が無料、ってはっきり書いてあるからここにしよう、自転車で配れるくらいだから、簡単な仕事なんだろう、しかも、60代、70代も活躍中!、って書いてある、という安易な気持ちで決断に至ったのですが、このことで後々地獄を見ます。
「寮費無料」のわけ
そもそも、寮費が無料なのには訳があります。経営者が優しいから?いいえ、もちろんそんなことはありません。
まずいろいろな理由から、経営者はバイクで配ってほしくなかった。
しかし通常はバイクで配るところを自転車で配らせるわけですから、配達は困難を極めます。配達が楽だから自転車で配らせるわけではないんです。
したがって、なかなか人が定着しません。上手い広告に乗せられて応募は次々に来るのですが、自宅通勤者はたちまち出てこなくなります。私の前も、1年半以上人が定着しませんでした。
しかし東京には、家庭が不安定だったり、親とそりが合わないために実家を飛び出した、地方出身の貧しい若者がいます。
経営者は彼らを無料で寮に住まわせ、住と職を強固に結びつけます。彼らは寮以外どこへも行くところがありませんし、寮に住んでいる限りは仕事に出ざるを得ません。
しかし賃金は恐ろしく低いですから、お金は一向に貯まらず、いつまでたっても貧困から抜け出せない負の連鎖に陥ります。
悲惨な寮
寮の部屋はガスなし、風呂なし、そして便所は共用でした。
ガスがないのは仕方ありませんから、電気ポットを購入しました。
風呂は駅前にあるジムのシャワーを使わせてもらうことにしました。配達をすると疲れてしまうので、ジムの運動器具は一度も使いませんでした。
便所は2カ所あり、約4人に1つ割り当てられていたのですが、そのうちの1つ(幸い自分の部屋から遠い方)はほとんど掃除しておらず、山の中の便所のようでした。そちらを使わせてもらおうと一度扉を開きましたが、しばらく立ち尽くして、そっと閉めました。
古い粗末な寮ですから、ゴキブリは非常に多いです。はじめの頃は、配達前にゴキブリをカップ麺の容器で捕獲し、帰ってきてから野原に放していました。
しかし毎回これをやるのがしんどくなり、100円ショップでゴキブリホイホイ(のようなもの)を購入しました。かわいそうなんて言っている余裕はありません。
ただ、ゴキブリはとても頭がよかった。結局1匹も捕れず、次はドラッグストアでコンバット(のようなもの)を購入しました。死体を回収することもあきらめたのです。
これは効いたのかわかりませんが、設置したコンバットの周辺には、大量の糞が散らばっていました。もちろん、見つけたら掃除しますよ。
「60代、70代も活躍中!」の裏側
「60代、70代も活躍中!」は本当でした。しかし、これには裏があります。彼らは全員若い頃から新聞屋一筋でやってきた人たちなのです。第2の人生で定着した人など、1人もいません。
からまわり
新聞配達所に入ると、道順を覚えるために何度もそこを手ぶらで回ります。これを空回りといいます。ななぞうが仕事を始めたのは梅雨がはじまる前でしたが、その年は暑い日が多かった。ななぞうは今まで室内にばかりいましたから、空回りは楽ではありませんでした。食欲もなくなります。しかし、これならなんとかやっていけそうだと思いました。ちなみに、空回りは無給です。
りんぱいのおじいさん
空回りが終わると、今度はおじいさんの後について回ることになりました。
おじいさんは「臨配(=りんぱい)」と呼ばれていました。臨配というのは、配達所で人手が足りなくなったときに臨時で雇われる、配達のプロです。専門の会社から派遣されてきます。
配達所の人は、臨配は2倍の給料をもらっている、と文句を言うのですが、それでもたかだか月30万円ほどです。ちなみに、ななぞうの給料は税引き前で月12万円ほどでした。
おじいさんの仕事は衝撃的です。
まず、順路帳を持ちません。順路上にはマンションもありますが、その部屋番号を全部覚えているのです。競馬の語呂で覚えると言います。しかも語呂を作るのが早く、順路帳が必要なのは最初の1週間だけだそうです。新聞自体は、着任した翌日から配れます。
おじいさんはななぞうが来るまで1年半ほど配達所にいたのですが、その間、配り間違いは一度もなかったとのことです。
さらに、配るのも誰より速かった。動きは合理的で、無駄がありません。新聞の梱包も一番きれいでした。
新聞配達はもちろん慣れもありますが、普通、このように完璧にはいきません。ななぞうは、自分の了見が狭かったことを思い知りました。
新聞配達の過酷さ
新聞配達当日は早朝2時頃に起床し、2時半頃に配達所に集合します。
新聞の束が運ばれてくると、それを自分の持ち場まで運び、1部1部チラシを挟み込みます。ちなみに、チラシは前日に自分でそろえておかなくてはなりません。
そうして一定量が完成すると、まとめて紐で縛り、所定の場所に置いておきます。それをトラック運転手が拾い、順路上の中継地点(大抵マンションの玄関付近)まで持っていってくれます。ななぞうは300部弱を配らねばなりませんでしたが、一度にそれを自転車に乗せることは出来ません。ですから、一度の出動で配り切るには、トラックの助けが必要です。中継地点は2カ所でした。
ななぞうはおじいさんに付いていくことはできました。しかし自分が配るとなると、予想以上に大変でした。
新聞は束になると非常に重いです。自転車の前のかごには生け花のようにして山盛りに積み、後ろにもかなりの量を積み上げて出発します。
雨が降ると、1部1部にビニールをかけるため、滑って扱いにくくなります。しかもビニールは完璧ではありませんから、中に水が入ることもあり、そうなってしまうと配達所まで戻らなくてはなりません。また、カッパを着てもびしょ濡れになります。
階段で足を滑らせたこともあります。でも自分のことですから、起き上がって配るしかありません。
台風の日も手当は出ません。むしろ1時間早く出勤しなくてはならないため、睡眠時間が削られてしまいます。
ちなみに、配達は微熱が出たくらいでは代わってもらいにくいです。配達所の人たちは、「あいつマジで使えねーな」とかしょっちゅう文句を言っています。ちなみに、「バイトの名前なんかどうでもいい」そうです。
このように、自転車による新聞配達とは、朝の2時半から6時まで恐ろしく重い荷物を運んで走り続ける仕事でした。しかも深夜なのに時給が1000円で、坂道も多いです。エイプリルフールでしょうか。
株に手を出す
体調も悪くなります。夕食にコンビニでサンドイッチを買ったのですが、吐き気がして、その2切れを食べきることが出来ませんでした。また、緑茶やオレンジジュースも飲めません。飲めたのは、麦茶とりんごジュースでした。そば弁当のつゆは灰のにおいがします。
ある日の配達中、このままいくと死ぬんじゃないかと思いました。でもなんとかしなきゃ、と思って配っていると、以前テレビで見た「FX」の2文字が頭をよぎります。
しかしよく調べてみると、FXの信用取引は危険性が高い上、儲かりそうもありません。株の現物取引の方がまだ良さそうです。
そこで下調べのため、学生時代に一度目を通した「ウォール街のランダムウォーカー」という本を再び開きました。この本の主張は、株式投資で市場平均を上回ることは困難、という至極まっとうなものですが、もうそんなことは言ってられません。なんとか利益を出さなくてはいけないんです。
次に「ピーター・リンチの株で勝つ」という本を読んでみました。この本にはランダムウォーカーよりはもう少し楽天的なことが書いてあります。何とかなりそうな気がしてきました。
さっそく資料を取り寄せ、ネット証券で口座を開設します。
でも素人が株をやっていきなり上手くいくはずなんてありませんよね。のちのちななぞうは、大きな損失を出すこととなります。
以下は明日以降に更新します。